愛犬との暮らしの中で、ブラッシングは欠かせないコミュニケーションであり、健康管理の一環です。しかし、ただブラシをかけるだけでは、静電気が起きたり、毛が絡まってしまったりと、かえって愛犬に不快な思いをさせてしまうことも少なくありません。そこで活躍するのが「グルーミングスプレー」です。
この記事では、グルーミングスプレーがどのようなもので、どのようなメリットがあるのかという基本的な知識から、愛犬にぴったりの一本を見つけるための具体的な選び方、効果を最大限に引き出す正しい使い方、そして安全に使用するための注意点まで、網羅的に解説します。さらに、飼い主さんたちが抱きがちな疑問にもお答えし、おすすめのグルーミングスプレーを10種類厳選してご紹介します。
この記事を読めば、グルーミングスプレーのすべてが分かり、愛犬とのケアタイムをより快適で有意義なものに変えることができるでしょう。
目次
グルーミングスプレーとは
グルーミングスプレーとは、犬のブラッシング時に使用する、被毛と皮膚のケアを目的としたスプレータイプのコンディショナーです。シャンプーのように洗い流す必要がなく、乾いた被毛に直接スプレーして使う手軽さが特徴です。単にブラッシングをしやすくするだけでなく、保湿、静電気防止、毛玉予防、消臭、紫外線対策など、製品によってさまざまな付加価値を持っています。
犬の被毛は、紫外線や乾燥、摩擦など、日常のさまざまな要因によってダメージを受けています。特に、現代の犬たちは室内で過ごす時間が長く、エアコンによる乾燥や、カーペットなどとの摩擦に常に晒されています。こうした環境は、被毛のパサつきや静電気の発生を招き、ひいては毛玉や皮膚トラブルの原因ともなりかねません。
従来のブラッシングは、抜け毛を取り除き、血行を促進する効果がありますが、乾いた状態で無理にブラシを通すと、摩擦によってキューティクルを傷つけ、静電気を発生させてしまうという側面も持っていました。グルーミングスプレーは、この問題を解決するために開発された製品です。
スプレーに含まれる保湿成分やコンディショニング成分が、被毛の一本一本をコーティングし、潤いを与えることで、ブラッシング時の摩擦を軽減します。 これにより、ブラシの通りが格段にスムーズになり、切れ毛や抜け毛を防ぎながら、愛犬に不快感を与えることなく、優しくケアできます。
また、犬の被毛構造は犬種によって大きく異なり、主に「ダブルコート」と「シングルコート」の二種類に分けられます。
- ダブルコート: 柴犬やゴールデン・レトリバーのように、皮膚を保護する硬めの上毛(オーバーコート)と、体温を調節する柔らかい下毛(アンダーコート)の二層構造になっています。換毛期には大量のアンダーコートが抜けるため、毛が絡まりやすく、毛玉ができやすいのが特徴です。
- シングルコート: プードルやマルチーズのように、アンダーコートがなく、オーバーコートのみで構成されています。抜け毛は少ないものの、毛が伸び続ける犬種が多いため、定期的なカットと日々のブラッシングで絡まりを防ぐ必要があります。
グルーミングスプレーは、こうした多様な被毛タイプに対応し、それぞれの悩みに合わせたケアを可能にします。 例えば、ダブルコートの犬には、アンダーコートまで成分が届き、毛の絡まりをほぐすタイプのスプレーが有効です。一方、シングルコートの犬には、被毛にツヤと潤いを与え、美しい状態をキープする保湿・美容液タイプのスプレーが適しています。
さらに、グルーミングスプレーは単なるケア用品に留まりません。製品によっては、ティーツリーやユーカリといった天然ハーブの香りがするものもあり、ブラッシングの時間を飼い主と愛犬双方にとってリラックスできる時間に変えてくれます。また、UVカット成分や虫除け成分が配合されたものであれば、散歩前の新習慣として取り入れることで、愛犬を外部の刺激から守ることも可能です。
このように、グルーミングスプレーは、日々のブラッシングの効果を最大限に高め、愛犬の被毛と皮膚を健やかに保ち、さらに快適なペットライフをサポートするための多機能なアイテムであると言えます。シャンプーが特別な日のスペシャルケアだとすれば、グルーミングスプレーは、毎日続けられる手軽なデイリーケアとして、現代の愛犬家にとって 필수품(必需品)となりつつあるのです。
グルーミングスプレーを使うメリット
グルーミングスプレーを日常のケアに取り入れることで、具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。ここでは、グルーミングスプレーがもたらす5つの主要なメリットについて、そのメカニズムとともに詳しく解説します。
静電気の発生を防ぐ
冬の乾燥した日にセーターを脱ぐと「バチッ」と静電気が走るように、犬の被毛も乾燥や摩擦によって静電気を帯びることがあります。特に、エアコンの効いた室内や乾燥しがちな季節のブラッシングは、静電気を発生させやすい状況です。
犬にとって静電気は、人間が感じる以上の不快感やストレスの原因となります。 被毛が逆立ったり、ブラシが体に触れるたびに軽い痛みを感じたりすることで、ブラッシング自体を嫌いになってしまう子も少なくありません。さらに、静電気を帯びた被毛は、空気中のホコリや花粉、ハウスダストなどを引き寄せやすくなります。これにより、被毛が汚れやすくなるだけでなく、アレルギー体質の犬にとっては、アレルゲンが体に付着しやすくなるという問題も生じます。
グルーミングスプレーは、この静電気問題を効果的に解決します。スプレーに含まれるグリセリンやヒアルロン酸、セラミドなどの保湿成分が、被毛の表面に潤いのヴェールを作り、水分量を高めます。 空気が乾燥していても、被毛自体が潤っていれば、電気は自然に放電されやすくなり、静電気の発生を根本から抑制できるのです。
その結果、ブラッシング時の「バチッ」という不快な刺激がなくなり、愛犬はリラックスしてケアを受けられるようになります。ホコリや汚れの付着も抑えられるため、被毛を清潔に保ちやすくなり、シャンプーの頻度を減らすことにも繋がるでしょう。静電気の防止は、単に快適なブラッシングを実現するだけでなく、愛犬のストレス軽減と衛生管理の向上に直結する重要なメリットです。
毛の絡まりや毛玉を防止する
長毛種や巻き毛の犬、あるいは換毛期で抜け毛が多いダブルコートの犬にとって、「毛玉」は非常によくある悩みのひとつです。毛玉は、抜けた毛が周囲の毛と絡み合い、フェルト状に固まってしまったもので、見た目が悪いだけでなく、犬の健康にもさまざまな悪影響を及ぼします。
毛玉ができると、その部分の皮膚が常に引っ張られた状態になり、犬は痛みや違和感を覚えます。さらに、毛玉の下は通気性が著しく悪化し、湿気がこもりやすくなるため、細菌が繁殖し、皮膚炎や真菌症などの皮膚トラブルを引き起こす温床となります。 一度できてしまった頑固な毛玉は、ブラッシングで解きほぐすのが難しく、最悪の場合、バリカンで刈り取らなければならなくなることもあります。
グルーミングスプレーは、こうした厄介な毛玉の「予防」に絶大な効果を発揮します。スプレーに含まれるシリコン誘導体や加水分解シルク、植物性オイルなどのコンディショニング成分が、被毛の一本一本を滑らかにコーティングします。 これにより、毛同士の摩擦が減り、ブラシの滑りが格段に良くなるのです。
日常的にグルーミングスプレーを使ってブラッシングすることで、小さな絡まりが大きな毛玉に発展するのを防ぎます。すでにできかかっている軽いもつれであれば、スプレーを吹きかけることで解きほぐしやすくなる効果も期待できます。
毛玉を予防することは、愛犬を痛みや皮膚病のリスクから守ることに繋がり、トリミングサロンでの追加料金(毛玉料金)を避けるという経済的なメリットもあります。 特に、プードルやビション・フリーゼ、シーズーなどの長毛種を飼っている方にとって、グルーミングスプレーは日々のケアを劇的に楽にしてくれる心強い味方となるでしょう。
被毛にツヤと潤いを与える
人間が髪の美しさを求めるように、愛犬の被毛も健康的なツヤと潤いに満ちているのが理想です。しかし、紫外線、ドライヤーの熱、加齢、栄養状態など、さまざまな要因で被毛はダメージを受け、パサつきやゴワつき、色褪せなどが起こります。
被毛のパサつきは、見た目の問題だけではありません。被毛の表面を覆うキューティクルが傷ついているサインであり、外部からの刺激を受けやすい状態にあることを示しています。これは、皮膚のバリア機能の低下にも繋がりかねません。
グルーミングスプレーには、被毛の健康と美しさをサポートする美容成分が豊富に含まれています。
- 保湿成分: ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミドなどが、被毛の内部に水分を補給し、しっとりとした潤いを保ちます。
- 補修成分: ケラチンやシルクプロテインなどが、傷んだキューティクルの隙間を埋め、ダメージを補修。被毛の強度を高め、ハリとコシを与えます。
- ツヤ出し成分: ホホバオイルやアルガンオイル、椿オイルなどの天然オイルが、被毛の表面をコーティングし、光を美しく反射させることで、輝くようなツヤを生み出します。
これらの成分が総合的に作用することで、グルーミングスプレーは被毛を内側と外側からケアし、触り心地の良い、なめらかで美しい状態へと導きます。 定期的に使用することで、まるでサロン帰りのような美しい仕上がりを維持することも可能です。愛犬の被毛が輝いていると、飼い主としても嬉しい気持ちになるものであり、日々のケアが一層楽しくなるという効果も期待できるでしょう。
紫外線や害虫から守る
犬も人間と同じように、紫外線や害虫といった外部の刺激に晒されています。特に、日中の散歩や屋外での活動が多い犬にとって、これらの対策は健康を守る上で非常に重要です。
【紫外線対策】
犬の被毛はある程度の紫外線をブロックする役割を果たしますが、長時間の強い日差しは、被毛やその下の皮膚にダメージを与えます。紫外線は、被毛の色褪せや乾燥、パサつきの原因となるだけでなく、皮膚が薄い部分(鼻や耳、お腹など)では、日焼けによる炎症や、長期的には皮膚がんのリスクを高める可能性も指摘されています。
UVカット成分が配合されたグルーミングスプレーは、散歩前にさっとスプレーするだけで、手軽に紫外線対策ができます。被毛をコーティングして紫外線が直接皮膚に届くのを防ぎ、ダメージを軽減します。特に、被毛が白い犬や、毛が短い犬、サマーカットにした犬などは皮膚が露出しやすいため、積極的なUVケアが推奨されます。
【害虫対策】
散歩中の草むらなどには、ノミやダニ、蚊といった害虫が潜んでいます。これらの虫は、単に犬を痒がらせるだけでなく、アレルギー性皮膚炎やフィラリア症など、深刻な病気を媒介することもあります。
虫除け効果のあるグルーミングスプレーには、シトロネラ、ユーカリ、ティーツリー、レモングラスといった、虫が嫌うとされる天然ハーブエキスが配合されていることが多くあります。これらの製品は、化学合成された殺虫成分とは異なり、比較的マイルドな作用で虫を寄せ付けにくくします。
グルーミングスプレーを外出前の習慣にすることで、ブラッシングと同時に紫外線・害虫対策ができるため、非常に効率的です。ただし、これらのスプレーはあくまで「忌避」を目的としたものであり、医薬品のような完全な駆除・予防効果を保証するものではない点は理解しておく必要があります。動物病院で処方されるノミ・ダニ駆除薬との併用が基本となります。
香り付けや消臭効果が期待できる
愛犬との暮らしの中で、気になることの一つが「ニオイ」かもしれません。犬特有の体臭は、皮脂の酸化や皮膚の常在菌の働きによって発生します。特に、梅雨時や湿度の高い季節には、ニオイが強くなる傾向があります。
多くのグルーミングスプレーには、こうした気になるニオイをケアするための機能が備わっています。
- 消臭効果: 柿タンニン、緑茶エキス、銀イオンといった消臭成分が配合されている製品は、ニオイの原因物質に直接作用し、中和・分解することで根本から臭いを抑えます。香りでごまかすマスキングタイプとは異なり、高い消臭効果が期待できます。
- 香り付け: ラベンダーやカモミール、ローズマリーなどの天然アロマオイルや、フローラル、フルーティー系の香料が配合されている製品もあります。ブラッシングのたびにふんわりと良い香りが広がることで、飼い主と愛犬双方のリラックス効果を高め、グルーミングの時間をより心地よいものにしてくれます。
シャンプーができない時や、来客前、お出かけ前などに、香り付きのグルーミングスプレーを使えば、手軽に愛犬をリフレッシュさせることができます。
ただし、犬の嗅覚は人間よりもはるかに優れているため、香りが強すぎる製品は犬にとってストレスになる可能性があります。愛犬の様子を見ながら、微香性のものや、犬がリラックスしやすいとされるハーブ系の香りを選ぶのがおすすめです。香りに敏感な子や、アレルギーの心配がある場合は、無香料タイプを選ぶのが最も安全な選択と言えるでしょう。
グルーミングスプレーの選び方
数多くのグルーミングスプレーの中から、愛犬に最適な一本を見つけるためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。ここでは、「目的」「成分」「肌質」「香り」「噴射タイプ」という5つの切り口から、具体的な選び方を詳しく解説します。
目的で選ぶ
まずは、「何のためにグルーミングスプレーを使いたいのか」という目的を明確にすることが大切です。愛犬の被毛の状態やライフスタイルに合わせて、必要な機能を持つ製品を選びましょう。
被毛のダメージケアや保湿
「被毛がパサついている」「ツヤがない」「触り心地がゴワゴワする」といった悩みを持つ犬には、ダメージケアや保湿に特化したグルーミングスプレーがおすすめです。
特に、シニア犬や、頻繁にシャンプーやドライヤーをする犬、日差しを浴びる機会が多い犬は、被毛が乾燥しがちです。これらの犬には、ヒアルロン酸、コラーゲン、セラミド、リピジュア®︎といった高保湿成分や、ケラチン、シルクプロテインなどの補修成分が豊富に含まれた製品を選びましょう。これらの成分は、被毛の内部に潤いを届け、傷んだキューティクルを補修することで、しっとりとまとまりのある、健康的な被毛へと導きます。製品の成分表示を確認し、これらの保湿・補修成分が上位に記載されているかをチェックするのがポイントです。
毛玉やもつれの防止
プードル、シーズー、マルチーズ、ゴールデン・レトリバー、ポメラニアンなど、毛が長い、または毛量が多い犬種にとって、毛玉やもつれは最大の悩みの一つです。こうした犬には、ブラッシングの滑りを良くし、毛の絡まりを防ぐ機能が優れたスプレーが不可欠です。
選ぶ際のポイントは、被毛をコーティングして滑りを良くする成分が含まれているかどうかです。代表的な成分には、ジメチコンなどのシリコン誘導体や、加水分解シルク、植物性オイル(ホホバオイルなど)があります。これらの成分が被毛の一本一本を包み込み、摩擦を低減させることで、驚くほどスムーズにブラシが通るようになります。毎日のブラッシングが楽になるだけでなく、愛犬が痛みを感じることも減り、頑固な毛玉ができるのを効果的に予防できます。
紫外線対策
日中の散歩が日課の犬や、ドッグランなどで屋外で遊ぶ時間が長い犬には、UVカット機能付きのグルーミングスプレーが役立ちます。
犬も人間と同様、紫外線によって皮膚や被毛にダメージを受けます。特に、毛色が薄い犬、毛が短い犬、サマーカットにしている犬は、地肌が紫外線の影響を受けやすいため注意が必要です。製品パッケージに「UVカット」「紫外線対策」といった表記があるかを確認しましょう。散歩前に全身にスプレーするだけで、手軽に日焼け対策ができます。夏場だけでなく、紫外線は一年中降り注いでいるため、日頃からケアを習慣にすると良いでしょう。
虫除け対策
キャンプやハイキングなどアウトドア活動が好きな犬や、草むらが多い公園を散歩する犬には、虫除け効果のあるグルーミングスプレーがおすすめです。
ノミやダニ、蚊などの害虫から愛犬を守るため、ティーツリー、シトロネラ、ユーカリ、ゼラニウム、レモングラスといった、虫が嫌う効果を持つ天然ハーブエキスが配合された製品を選びましょう。これらの天然成分を使用した製品は、化学的な殺虫剤に比べて犬の体への負担が少なく、安心して使用できるのがメリットです。ただし、前述の通り、あくまで虫を「寄せ付けにくくする」ためのものであり、動物病院で処方される駆除薬と併用することが大切です。
配合されている成分で選ぶ
グルーミングスプレーは愛犬の皮膚や被毛に直接触れるものだからこそ、配合されている成分をしっかりと確認することが重要です。ここでは、チェックしたい成分と、避けるべき成分について解説します。
チェックしたい保湿・保護成分
愛犬の被毛と皮膚を健やかに保つためには、以下のような保湿・保護成分が含まれている製品がおすすめです。それぞれの特徴を理解し、愛犬の悩みに合った成分を選びましょう。
成分カテゴリ | 代表的な成分名 | 主な効果 |
---|---|---|
高保湿成分 | ヒアルロン酸、セラミド、コラーゲン、リピジュア®︎ | 被毛と皮膚に水分を補給し、乾燥を防ぐ。特にパサつきが気になる場合に効果的。 |
補修成分 | ケラチン、シルクプロテイン(加水分解シルク) | ダメージを受けたキューティクルを補修し、被毛にハリとコシを与える。切れ毛や枝毛の予防。 |
コンディショニング成分 | ジメチコン、シクロメチコン(シリコン系) | 被毛をコーティングし、指通りやブラシの滑りを良くする。毛玉防止に高い効果を発揮。 |
天然オイル成分 | ホホバオイル、アルガンオイル、椿オイル、シアバター | 被毛に自然なツヤを与え、保護する。保湿効果も高く、しなやかな仕上がりに。 |
植物エキス | アロエベラエキス、カミツレ花エキス、ローズマリー葉エキス | 皮膚の炎症を抑えたり、抗菌作用があったりと、皮膚を健やかに保つ効果が期待できる。 |
肌が弱い犬が避けたい成分
特に皮膚がデリケートな犬やアレルギー体質の犬の場合、特定の成分が刺激となり、かゆみや赤み、フケなどの皮膚トラブルを引き起こす可能性があります。以下のような成分が含まれていないか、成分表示を注意深く確認しましょう。
- アルコール(エタノール): 殺菌効果や清涼感のために配合されることがありますが、揮発性が高く、皮膚の水分を奪って乾燥を招くことがあります。敏感肌の犬には刺激になる可能性が高い成分です。
- パラベン(メチルパラベン、プロピルパラベンなど): 防腐剤として広く使用されていますが、アレルギー反応を引き起こす可能性があると指摘されています。近年では「パラベンフリー」を謳う製品が増えています。
- 合成香料・合成着色料: 製品の香りや色を良くするために使用されますが、これらもアレルギーの原因となることがあります。特に香料は、犬にとってストレスになる場合もあるため、無香料か天然由来の香りの製品が安心です。
- 石油系界面活性剤(ラウレス硫酸ナトリウムなど): 洗浄力が強い一方で、皮膚への刺激が強く、必要な皮脂まで奪ってしまう可能性があります。グルーミングスプレーではあまり使われませんが、念のため確認すると良いでしょう。
「無添加」「低刺激」「オーガニック」といった表記も一つの目安になりますが、何が無添加なのかは製品によって異なります。必ず裏面の全成分表示を確認し、愛犬の肌に合わない成分が入っていないか自分の目で確かめる習慣をつけることが大切です。
愛犬の肌質で選ぶ
人間の肌質に乾燥肌や脂性肌があるように、犬の肌質もさまざまです。愛犬の肌質に合った製品を選ぶことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
- 乾燥肌の犬: フケが出やすい、皮膚をよく掻いているなどの特徴があります。セラミドやヒアルロン酸などの高保湿成分が豊富に含まれた、しっとりタイプのスプレーを選びましょう。オイル系の成分も乾燥を防ぐのに効果的です。
- 脂性肌の犬: 皮膚がベタつきやすい、体臭が強いといった傾向があります。オイル成分が多すぎる製品は避け、さっぱりとした使用感のミストタイプや、ティーツリーなどの抗菌作用が期待できるハーブエキスが配合されたものがおすすめです。
- 敏感肌・アレルギー体質の犬: 特定の成分に反応して、赤みやかゆみが出やすい犬です。アルコール、パラベン、合成香料などが無添加の低刺激処方の製品を選びましょう。初めて使う製品は、必ず目立たない部分でパッチテストを行ってから使用してください。
愛犬の肌質がわからない場合や、皮膚に何らかの異常が見られる場合は、自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談することをおすすめします。
香りの有無で選ぶ
グルーミングスプレーの香りも、選ぶ際の重要なポイントです。
- 香り付きタイプ: ラベンダーやカモミールなどのリラックス効果が期待できる香りや、飼い主さんの好みの香りを選ぶことで、グルーミングタイムをより楽しいものにできます。消臭効果を兼ね備えた製品も多く、体臭が気になる犬にも適しています。
- 無香料タイプ: 犬の嗅覚は人間の数千倍から1億倍とも言われ、強い香りはストレスの原因になることがあります。香りに敏感な犬や、アレルギーの心配がある犬、飼い主自身が強い香りが苦手な場合は、無香料タイプを選ぶのが最も安全で確実です。
初めてグルーミングスプレーを試す場合は、まず無香料タイプから始めてみるのが良いでしょう。香り付きを選ぶ場合も、できるだけ香りがマイルドなものや、天然アロマを使用したものを選ぶことをおすすめします。
スプレーの噴射タイプで選ぶ
スプレーの噴射方法も、使いやすさや愛犬の反応を左右する要素です。
- トリガータイプ: 指でレバーを引く一般的なタイプ。広範囲に噴射しやすく、毛量が多い犬にも手早くスプレーできます。ただし、「シューッ」という噴射音が比較的大きいため、音に敏感な犬は怖がってしまうことがあります。
- ミストタイプ(霧吹きタイプ): 非常に細かい霧状の粒子がふんわりと噴射されるタイプ。噴射音が静かで、液体が均一に広がりやすいため、音に敏感な犬や小型犬におすすめです。液だれしにくく、顔周りなどデリケートな部分にも使いやすいのが特徴です。
- エアゾールタイプ: ガス圧で噴射するタイプ。粒子が非常に細かく、速乾性に優れています。プロのトリマーも使用することがありますが、噴射音が大きいことや、ガスの成分を犬が吸い込んでしまう懸念から、家庭での使用にはあまり一般的ではありません。
愛犬がスプレー音を怖がる場合は、静音性に優れたミストタイプを選ぶか、後述するように一度手に取ってから体に馴染ませる使い方を試してみましょう。
グルーミングスプレーのおすすめ10選
ここからは、これまでの選び方を踏まえ、人気と実力を兼ね備えたおすすめのグルーミングスプレーを10種類、厳選してご紹介します。各製品の特徴や成分を比較し、愛犬にぴったりの一本を見つけてください。
製品名 | 主な特徴 | 主な有効成分 | 香り | こんな犬におすすめ |
---|---|---|---|---|
① A.P.D.C. グルーミングスプレー | 天然成分主体で消臭・抗菌効果が高い | ティーツリーオイル、ユーカリオイル、ローズマリーオイル | 爽やかなハーブの香り | 体臭が気になる犬、アウトドア派の犬 |
② BIOGANCE グリスヘアーコンディショナー | 被毛の絡まり防止とツヤ出しに特化 | シリコン、プロビタミンB5 | 優しいスイートアーモンドの香り | 長毛種、毛玉ができやすい犬 |
③ Lafancys ブラッシュアップコンディショナー | プロ仕様の仕上がり。静電気防止効果◎ | 特殊PPT、ホホバオイル | ほのかなフローラル系の香り | ショーに出る犬、最高の仕上がりを求める方 |
④ ZOIC ブラッシュアップフレグケア | 消臭と香り付け。フレグランス感覚で使える | 緑茶エキス、柿タンニン、コラーゲン | グリーンフローラルの香り | 香りを楽しみたい方、消臭を重視する方 |
⑤ Pet-Cool Silk & Collagen | 国産・無添加。保湿とダメージ補修 | シルクプロテイン、コラーゲン | 無香料 | 敏感肌の犬、皮膚トラブルが心配な犬 |
⑥ FLUFFY GROOMING SPRAY | 全成分食品由来。舐めても安心な安全性 | 大豆脂肪酸、ヤシ油、トレハロース | ほぼ無臭 | 子犬やシニア犬、何でも口にする犬 |
⑦ Nature+Aid グルーミングワイプ | スプレーが苦手な子に。シートタイプ | アロエベラ、ビタミンE、オートミール | 香りのバリエーションあり | スプレーを嫌がる犬、部分的な汚れ落としに |
⑧ Artero フラッシュシャイン・コンディショナー | 輝くツヤとシルキーな手触りを実現 | 特殊シリコン、コンディショニング成分 | 甘く華やかな香り | 被毛のツヤを重視する方、長毛種 |
⑨ Kirei-to(キレイット)ブラッシングスプレー | 複合アミノ酸で被毛を内側から補修 | 複合アミノ酸、シルクプロテイン、ヒアルロン酸 | 優しいフローラルの香り | 被毛のダメージが気になる犬、乾燥がちな犬 |
⑩ PANA-ZOO パナズー スキンシェルター | 紫外線・乾燥・静電気から皮膚と被毛を保護 | アミノ酸、ハイビスカスエキス、キトサン | ほぼ無臭 | 敏感肌の犬、紫外線対策をしたい犬 |
① A.P.D.C. グルーミングスプレー
天然成分にこだわり、愛犬と飼い主に優しいケアを提供するブランドとして高い人気を誇るA.P.D.C.の定番グルーミングスプレーです。最大の特徴は、主成分であるティーツリーオイル。優れた抗菌・消臭効果を持つことで知られ、ブラッシングするだけで被毛を清潔に保ち、気になる体臭を抑えます。
さらに、ユーカリオイルやローズマリーオイル、ラベンダーオイルといった天然ハーブが爽やかに香り、虫が嫌がる効果も期待できるため、お散歩前の使用にも最適です。保湿成分として植物性グリセリンも配合されており、乾燥を防ぎながら静電気を抑制。毛の絡まりをほぐし、ツヤのあるサラサラな仕上がりを実現します。安全性と機能性を両立させたい、オーガニック志向の飼い主さんにおすすめの一本です。
(参照:株式会社たかくら新産業 公式サイト)
② BIOGANCE グリスヘアーコンディショナー
フランス発のペットケアブランド、BIOGANCE(バイオガンス)の製品で、特に長毛種の毛玉やもつれに悩む飼い主さんから絶大な支持を得ています。その秘密は、特殊配合されたシリコンとプロビタミンB5。被毛を滑らかにコーティングし、ブラッシング時の摩擦を大幅に軽減。頑固な毛玉もほぐしやすくし、日々のケアを格段に楽にしてくれます。
パラベンフリー・弱酸性で、デリケートな犬の皮膚にも配慮されています。スイートアーモンドの優しい香りが、ケアタイムを心地よく演出。もつれやすいアンダーコートを持つダブルコートの犬や、プードル、シーズーなどの長毛種には、まさに救世主とも言える製品です。毎日のブラッシングで指が止まってしまう、という経験のある方にぜひ試してほしいアイテムです。
(参照:BIOGANCE 日本公式サイト)
③ Lafancys ブラッシュアップコンディショナー
多くのプロのトリマーやブリーダーに愛用されている、まさにプロ仕様のグルーミングスプレーです。Lafancys(ラファンシーズ)は、ショーに出る犬たちのための最高級の仕上がりを追求するブランド。その実力は、家庭での普段使いでも十分に発揮されます。
特殊PPT(マリンコラーゲンたんぱく質)が被毛のダメージを補修し、内側からハリとコシを与えます。また、優れた静電気防止効果で、ホコリや汚れの付着を防ぎ、美しい状態を長時間キープ。オイルフリー処方でベタつかず、サラサラでエアリーな仕上がりになるのが特徴です。仕上がりの美しさに徹底的にこだわりたい方、ワンランク上のケアを目指す方に最適な一本です。
(参照:Lafancys 公式サイト)
④ ZOIC ブラッシュアップフレグケア
ペットサロン向けのシャンプーで高いシェアを誇るZOIC(ゾイック)が開発した、消臭と香り付けに特化したグルーミングスプレーです。緑茶エキスと柿タンニンのダブル消臭成分が、気になる体臭や排泄臭をしっかりと消臭。そこに、華やかなグリーンフローラルの香りが重なり、まるでフレグランスのように香りを楽しめます。
もちろん、グルーミングスプレーとしての基本性能も高く、被毛のコンディショニング成分や保湿成分であるコラーゲンが、ブラッシングをスムーズにし、ツヤと潤いを与えます。「愛犬のニオイが気になる」「良い香りを持続させたい」というニーズに応える製品で、お出かけ前や来客前のエチケットとしても活躍します。
(参照:株式会社ハートランド ZOIC公式サイト)
⑤ Pet-Cool Silk & Collagen
「医療目的の技術をペットケアに」というコンセプトのもと、国産・無添加にこだわって作られているのがPet-Cool(ペットクール)シリーズです。この「Silk & Collagen」は、その名の通り、国産シルクプロテインとマリンコラーゲンを主成分とした贅沢な保湿・補修スプレーです。
成分は、シルクプロテイン、コラーゲン、そして原料の水には特許製法で作られた浸透性の高い電解水のみ、という究極のシンプル処方。化学薬品や添加物を一切使用していないため、皮膚が非常にデリケートな犬や、アレルギー体質の犬でも安心して使えます。無香料なので、匂いに敏感な犬や飼い主さんにも最適。被毛のダメージ補修と徹底した保湿ケアを、最高の安全性のもとで行いたい場合に選ぶべき一本です。
(参照:株式会社Bellwoods Pet-Cool公式サイト)
⑥ FLUFFY GROOMING SPRAY
「愛犬が舐めても安心」を徹底的に追求し、全成分が食品由来成分で作られている画期的なグルーミングスプレーです。主成分は、水と大豆脂肪酸、ヤシ油、そして保湿成分のトレハロースのみ。化学合成物質は一切使用していません。
大豆由来の成分が持つ洗浄効果で、皮脂汚れや目ヤニ、耳の汚れなどを優しく浮かせて落とします。ブラッシングスプレーとして使えば、静電気を防ぎ、被毛をふんわりと仕上げます。アルコールや界面活性剤、防腐剤もフリーなので、子犬やシニア犬、体を舐める癖がある犬、肌トラブルを抱える犬にも安心して使えます。究極の安全性を求める飼い主さんから高い評価を得ています。
(参照:FLUFFY公式サイト)
⑦ Nature+Aid グルーミングワイプ
こちらはスプレータイプではありませんが、スプレーの音や感触を嫌がる犬に最適な、シート(ワイプ)タイプのケア用品です。アメリカの自然派ブランドNature+Aid(ネイチャーエイド)の製品で、100%天然成分で作られています。
厚手で丈夫なシートに、アロエベラやビタミンE、オートミールといった保湿・鎮静成分がたっぷり含まれており、体を拭くだけで汚れを落とし、被毛と皮膚に潤いを与えます。散歩後の足裏の汚れ拭きや、シャンプーができない時の体拭き、部分的なケアなど、さまざまなシーンで手軽に使えて便利です。スプレーを怖がる愛犬のグルーミング入門として、また、常備しておくと何かと役立つアイテムです。
(参照:Nature+Aid 日本総代理店 株式会社F.L.Fのウェブサイト等)
⑧ Artero フラッシュシャイン・コンディショナー
スペインのプロフェッショナル向けグルーミング用品ブランド、Artero(アルテロ)が送る、被毛に輝くようなツヤを与えることに特化した製品です。その効果は絶大で、スプレーするだけで被毛が光を反射し、まるでシルクのような手触りとゴージャスな輝きをもたらします。
非常に軽い特殊なシリコンオイルが主成分で、ベタつくことなく、サラサラとした仕上がりを実現。長毛種の被毛を美しく見せたい時や、ドッグショーなど特別な日の仕上げに最適です。甘く華やかな香りが持続するのも特徴。愛犬をより一層輝かせたい、見た目の美しさを追求する飼い主さんにおすすめのプロユース製品です。
(参照:Artero 公式サイト)
⑨ Kirei-to(キレイット)ブラッシングスプレー
皮膚と被毛の専門家が開発した、被毛の健康を内側から考えるサイエンス志向のブラッシングスプレーです。最大の特徴は、被毛の主成分であるケラチンを構成する18種類のアミノ酸を複合的に配合している点。これにより、ダメージを受けた被毛の内部に直接栄養を届け、根本から補修・強化します。
さらに、シルクプロテインやヒアルロン酸、リピジュア®︎といった保湿・保護成分も贅沢に配合。パサつきや切れ毛を抑え、しなやかで健康的な被毛へと導きます。静電気防止効果も高く、毛玉予防にも貢献。ダメージヘアに悩む犬や、根本的な被毛改善を目指したい方に試してほしい高機能スプレーです。
(参照:Kirei-to公式サイト)
⑩ PANA-ZOO パナズー スキンシェルター
「皮膚を守る」という発想から生まれた、多機能なプロテクトスプレーです。アミノ酸を主成分としたローションが、皮膚と被毛の表面に見えないヴェール(シェルター)を形成。このヴェールが、紫外線、乾燥、静電気、ハウスダスト、花粉など、さまざまな外部の刺激から愛犬を守ります。
ハイビスカスエキスやキトサンなどの天然由来成分が、皮膚のバリア機能をサポートし、健康な状態を保ちます。ベタつかず、サラッとした使用感で、毎日のケアに手軽に取り入れられます。特に、アレルギー体質の犬や、皮膚が敏感で外部刺激に弱い犬にとって、心強いお守りのような存在になるでしょう。
(参照:株式会社ペットハブ PANA-ZOO公式サイト)
グルーミングスプレーの正しい使い方
グルーミングスプレーの効果を最大限に引き出すためには、正しい手順で使うことが大切です。以下の3つのステップを守るだけで、仕上がりが格段に向上し、愛犬への負担も軽減できます。
① ブラッシングで毛並みを軽く整える
いきなりスプレーを吹きかけるのではなく、まずはスリッカーブラシやピンブラシなどを使い、毛並みに沿って軽くブラッシングを始めましょう。この最初のステップには、いくつかの目的があります。
一つは、被毛の表面に付着した大きなホコリやゴミ、抜け毛などをあらかじめ取り除いておくことです。これにより、後から使うグルーミングスプレーの成分が、被毛や皮膚にダイレクトに浸透しやすくなります。
もう一つの目的は、大きな毛のもつれがないかを確認することです。もし、指で触ってわかるような毛玉がある場合は、無理にブラシで引っ張ってはいけません。犬に痛みを与えるだけでなく、皮膚を傷つけてしまう恐れがあります。頑固な毛玉は、後の工程でスプレーを使って丁寧にほぐしていくか、場合によってはハサミでカットする必要があります(皮膚を切らないよう細心の注意が必要です)。
この予備ブラッシングは、いわばグルーミング本番前の「準備運動」です。愛犬に「これからブラッシングを始めるよ」という合図を送る意味合いもあり、スムーズなケアの導入に繋がります。
② 犬の体から少し離してスプレーする
次に、グルーミングスプレーを噴射します。この時、犬の体から20〜30cmほど離してスプレーするのがポイントです。
近すぎるとスプレー液が一箇所に集中してしまい、ベタつきの原因になったり、犬を驚かせたりしてしまいます。逆に遠すぎると、成分が空気中に飛散してしまい、効果が薄れてしまいます。20〜30cmの距離から、被毛全体にふんわりと霧がかかるようなイメージで、まんべんなくスプレーしましょう。
スプレーする量は、犬のサイズや毛量によって調整します。基本的には、被毛の表面が軽く湿る程度で十分です。かけすぎると乾きにくくなったり、仕上がりが重たくなったりすることがあるので注意してください。特に長毛種の場合は、被毛をかき分けながら、内側の毛にもスプレーが行き渡るようにすると、より効果的です。
この段階で、愛犬がスプレーの音や感触を嫌がる素振りを見せた場合は、無理強いしないことが重要です。 その際の対処法については、後の「注意点」のセクションで詳しく解説します。
③ 全体に馴染ませるようにブラッシングする
スプレー液が被毛全体に行き渡ったら、最後の仕上げのブラッシングです。ここでの目的は、スプレーの有効成分を被毛の根元から毛先まで均一に馴染ませ、同時に毛の絡まりを解きほぐし、毛並みを整えることです。
まずは、毛の流れに沿って、スリッカーブラシやピンブラシで優しくとかしていきます。スプレーの効果でブラシの滑りが良くなっているはずなので、力を入れすぎず、スムーズに動かしましょう。毛がもつれている箇所は、無理に引っ張らず、毛先から少しずつ、丁寧にほぐしていきます。
全体的にブラシが通るようになったら、最後にコーム(櫛)を使います。コームは、ブラシでは見逃しがちな細かな絡まりや、残っている抜け毛を取り除くのに役立ちます。コームが毛の根元から毛先までスムーズに通れば、ブラッシング完了のサインです。
この一連のプロセスを通じて、グルーミングスプレーの成分が被毛と皮膚にしっかりと浸透し、保湿、静電気防止、ツヤ出しといった効果が最大限に発揮されます。正しい使い方をマスターすることで、日々のブラッシングが、単なる作業から愛犬の美と健康を育む上質なケアへと変わるでしょう。
グルーミングスプレーを使う際の注意点
手軽で便利なグルーミングスプレーですが、愛犬に安全・快適に使ってもらうためには、いくつかの注意点があります。大切な愛犬のために、以下のポイントを必ず守りましょう。
顔周りには直接スプレーしない
グルーミングスプレーを使用する上で、最も重要な注意点が「顔周りへの使用方法」です。スプレーを犬の顔に直接噴射することは絶対に避けてください。
万が一、スプレー液が目や鼻、口に入ってしまうと、強い刺激を与えたり、炎症を引き起こしたりする可能性があります。また、犬は顔に突然何かが吹き付けられることを非常に嫌がります。これを経験すると、スプレーボトルを見ただけで逃げ出すようになるなど、トラウマになってしまうことも少なくありません。
顔周りの被毛をケアしたい場合は、飼い主さんの手や、清潔な布、あるいはブラシにグルーミングスプレーを一度吹き付けてから、その手や布で優しく拭うように馴染ませましょう。 この方法であれば、目や口に入るリスクを避けながら、安全に必要な箇所だけをケアできます。特に目の周りはデリケートなので、慎重に行ってください。
初めて使用する際は少量から試す
人間用の化粧品と同じように、犬用のグルーミングスプレーも、初めて使用する製品は必ず「パッチテスト」を行うことを強く推奨します。どんなに安全性の高い成分で作られていても、個体によっては特定の成分にアレルギー反応を示してしまう可能性があるからです。
パッチテストの方法は簡単です。
- 犬の体であまり目立たず、かつ犬が自分で舐めにくい場所(お腹や内股などが適しています)を選びます。
- その箇所に、少量のグルーミングスプレーを吹き付けます。
- その後、24時間ほど様子を見て、皮膚に赤み、かゆみ、発疹、フケなどが出ていないかを確認します。
特に異常が見られなければ、全身に使用しても問題ない可能性が高いと判断できます。新しい製品を試す際は、この一手間を惜しまないことが、愛犬を皮膚トラブルから守る上で非常に重要です。
皮膚に異常が出たらすぐに使用を中止する
パッチテストで問題がなかったとしても、使用を続けるうちに体調の変化などで皮膚の状態が変わり、突然合わなくなることもあり得ます。もし、グルーミングスプレーを使用中、または使用後に、愛犬が体をしきりに掻いていたり、皮膚に赤み、湿疹、フケなどの異常が見られたりした場合は、直ちに使用を中止してください。
その上で、まずはぬるま湯でスプレーの成分を優しく洗い流してあげましょう。症状が軽い場合はこれで治まることもありますが、かゆみや赤みが続く、あるいは悪化するような場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに動物病院を受診してください。その際、使用したグルーミングスプレーを持参すると、獣医師が原因を特定する上で役立ちます。
スプレーを嫌がる場合は布に含ませて使う
犬の中には、スプレーの「シューッ」という噴射音や、液体が体に吹き付けられる感覚を極端に怖がる子がいます。これは犬にとって自然な反応であり、無理強いは禁物です。無理に押さえつけてスプレーしようとすると、ブラッシングそのものに強い恐怖心を抱いてしまい、今後のケアが困難になる可能性があります。
愛犬がスプレーを嫌がる場合は、顔周りのケアと同様に、直接体に吹きかけるのをやめましょう。 代わりに、飼い主さんの手や、柔らかいガーゼ、マイクロファイバータオルなどの布、あるいはいつも使っているブラシにスプレーを適量吹き付けます。そして、そのスプレー液を含んだ手や布で、体を優しく撫でるように、あるいはブラシでとかすようにして、成分を被毛に馴染ませていきます。
この方法であれば、犬を怖がらせることなく、グルーミングスプレーの効果を得ることができます。「スプレー=怖いもの」という認識をさせないことが何よりも大切です。
高温多湿を避けて保管する
グルーミングスプレーに含まれる天然成分や保湿成分は、高温多湿や直射日光に弱いものが多くあります。不適切な環境で保管すると、成分が劣化して本来の効果を発揮できなくなったり、雑菌が繁殖して品質が低下したりする恐れがあります。
製品の品質を保ち、安全に使用するためにも、保管場所には注意が必要です。使用後は必ずキャップをしっかりと閉め、直射日光が当たらない、涼しくて湿気の少ない場所(冷暗所)で保管するようにしましょう。特に夏場の車内や、窓際、浴室などに置きっぱなしにすることは避けてください。また、幼い子供やペットの手が届かない場所に保管することも、誤飲などの事故を防ぐために重要です。
グルーミングスプレーに関するよくある質問
ここでは、グルーミングスプレーに関して、飼い主さんから寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
グルーミングスプレーは毎日使っても大丈夫?
結論から言うと、製品の成分や処方によりますが、多くのグルーミングスプレーは毎日の使用を想定して作られています。
日常のブラッシング時に使用することで、日々の汚れを落とし、静電気や毛玉を予防し、被毛を常に良い状態に保つことができます。特に、長毛種や毛玉ができやすい犬種にとっては、毎日のケアが理想的です。
ただし、注意点もあります。まず、アルコール(エタノール)が多く含まれている製品や、香りが強い製品を毎日使用するのは、皮膚への刺激や犬のストレスを考えると、あまりおすすめできません。 毎日の使用を考えている場合は、できるだけ肌に優しい低刺激処方、無添加、あるいは天然成分主体の製品を選ぶのが良いでしょう。
また、どんなに良い製品でも、使いすぎは禁物です。毎回の使用量を守り、愛犬の皮膚や被毛の状態をよく観察しながら頻度を調整することが大切です。もし、フケが増えたり、皮膚がベタついたりするようなら、使用頻度を2〜3日に一度に減らすなど、愛犬に合ったペースを見つけてあげましょう。
グルーミングスプレーは手作りできる?
インターネット上では、グリセリンや精製水、アロマオイルなどを使った手作りグルーミングスプレーのレシピを見かけることがあります。
手作りのメリットは、何と言ってもコストを抑えられることと、自分で成分を選べる安心感があることです。
一方で、デメリットやリスクも大きいことを理解しておく必要があります。
- 品質の不安定さ: 正確な計量が難しく、成分の濃度が毎回変わってしまう可能性があります。濃度が高すぎると皮膚への刺激となり、低すぎると効果が得られません。
- 保存性の低さ: 市販品のように防腐剤が入っていないため、非常に腐りやすく、雑菌が繁殖するリスクが高いです。作ったものは冷蔵庫で保管し、数日以内に使い切る必要があります。
- 専門知識の必要性: 特にアロマオイル(精油)を使用する場合、犬にとって安全な種類や濃度に関する正しい知識が不可欠です。中には、犬に対して毒性を持つアロマオイル(ティーツリーの高濃度使用など)もあるため、安易な使用は危険です。
これらのリスクを考慮すると、安全性の観点からは、ペット用に開発・品質管理された市販品を使用することを強くおすすめします。 どうしても手作りしたい場合は、リスクを十分に理解した上で、信頼できる情報源を元に、自己責任で行うようにしてください。
人間用の寝ぐせ直しなどで代用できる?
これは絶対にやめてください。人間用のヘアケア製品(寝ぐせ直し、ヘアミスト、コンディショナーなど)を犬に使用することは非常に危険です。
その理由は、犬と人間の皮膚には、以下のような根本的な違いがあるからです。
- 皮膚のpH(ペーハー)値の違い: 人間の皮膚が弱酸性(pH4.5〜6.0)なのに対し、犬の皮膚は中性〜弱アルカリ性(pH6.2〜8.6程度)です。人間用に作られた弱酸性の製品は、犬の皮膚のpHバランスを崩し、バリア機能を低下させて、細菌の繁殖や皮膚トラブルを招く原因になります。
- 皮膚の薄さ: 犬の皮膚の表皮は、人間の約1/3〜1/5程度の薄さしかありません。そのため、外部からの刺激に非常にデリケートです。
- 配合成分の違い: 人間用の製品には、アルコール、強力な香料、犬にとっては刺激が強すぎる界面活性剤など、犬の体には適さない成分が多く含まれています。
これらの製品を犬に使うと、皮膚炎やアレルギー反応を引き起こすだけでなく、犬が体を舐めた際に有害な成分を摂取してしまうリスクもあります。愛犬の健康を守るため、必ず犬専用に設計された製品を使用してください。
猫にも使用できる?
製品によります。「犬猫兼用」と明記されている製品であれば、猫にも使用できます。 しかし、「犬用」としか書かれていない製品を、自己判断で猫に使用するのは避けるべきです。
特に注意が必要なのが、アロマオイル配合の製品です。猫は、特定のアロマオイル(精油)の成分を分解する酵素を体内で作ることができません。そのため、ティーツリー、ユーカリ、ペパーミント、柑橘系(リモネン)などの精油は、猫が皮膚から吸収したり、毛づくろいで舐めとったりすると、中毒症状(嘔吐、痙攣、肝機能障害など)を引き起こす可能性があり、非常に危険です。
A.P.D.C.のグルーミングスプレーのように、ティーツリーオイルを配合している人気製品も、基本的には犬用であり、猫への使用は推奨されていません。猫のいるご家庭でグルーミングスプレーを選ぶ際は、「猫にも安全」とはっきり記載されている製品を選ぶか、無香料の製品を選ぶのが最も確実です。
ブラッシング自体を嫌がる場合はどうすればいい?
グルーミングスプレー以前に、そもそもブラッシングを嫌がる子も多いです。その場合、まずは「ブラッシング=楽しいこと、気持ちいいこと」というポジティブなイメージを持たせることが重要です。
- 短い時間から始める: 最初は数秒間、背中を優しく撫でるようにブラシを当てるだけから始め、できたらすぐにおやつをあげてたくさん褒めてあげましょう。これを繰り返し、少しずつ時間を延ばしていきます。
- 道具を見直す: ブラシが肌に合っておらず、痛みを感じている可能性もあります。肌当たりの柔らかいラバーブラシや、獣毛ブラシなど、愛犬が嫌がらないタイプのブラシを探してみましょう。
- タイミングを選ぶ: 愛犬がリラックスしている食後や、遊び疲れて眠そうな時などに行うと、受け入れやすいことがあります。
- グルーミングスプレーを活用する: 静電気や毛の引っかかりが不快感の原因であることも多いです。本記事で紹介したような、滑りを良くするグルーミングスプレーを使うことで、ブラッシングの痛みがなくなり、好きになってくれるケースも少なくありません。
焦らず、根気よく、愛犬のペースに合わせてトレーニングすることが成功の鍵です。
まとめ
グルーミングスプレーは、日々のブラッシングをより効果的で快適なものに変え、愛犬の被毛と皮膚の健康を守るための強力なツールです。
この記事では、グルーミングスプレーがもたらす「静電気防止」「毛玉予防」「保湿・ツヤ出し」「紫外線・害虫対策」「消臭・香り付け」といった数多くのメリットから、愛犬に最適な一本を選ぶための具体的な基準、そして効果を最大限に引き出す正しい使い方と安全のための注意点まで、幅広く解説してきました。
最適なグルーミングスプレーを選ぶための重要なポイントは、以下の3つです。
- 目的に合わせる: 毛玉予防、保湿、紫外線対策など、愛犬の悩みやライフスタイルに合った機能を持つ製品を選びましょう。
- 成分を確認する: 愛犬の肌質を考慮し、保湿・保護成分が豊富で、アルコールやパラベンなどの刺激となりうる成分を含まない、肌に優しい製品を選びましょう。
- 愛犬の反応を見る: 香りの強さやスプレーの噴射音など、愛犬がストレスを感じない製品を選ぶことが、継続的なケアには不可欠です。
グルーミングスプレーを使った毎日のブラッシングは、単に被毛を美しく保つだけでなく、皮膚の異常を早期に発見したり、愛犬との絆を深めたりする、かけがえのないコミュニケーションの時間となります。
この記事でご紹介した選び方やおすすめ製品を参考に、ぜひあなたの愛犬にぴったりのグルーミングスプレーを見つけて、今日からワンランク上のケアを始めてみてください。きっと、愛犬の輝く被毛と、より豊かなペットライフがあなたを待っているはずです。