メンズコスメ市場規模の最新動向と今後の予測をデータで徹底解説

メンズコスメ市場規模の最新動向と今後の予測、データを基にそのすべてを徹底解説

近年、男性の美容意識の高まりとともに、「メンズコスメ」市場が急速な成長を遂げています。かつては一部の美意識が高い男性のものであった化粧品は、今や幅広い年代の男性にとって、身だしなみや自己表現の一環として当たり前の存在になりつつあります。

この記事では、メンズコスメ市場の現状と未来を深く理解するために、最新の市場規模データや推移、市場が拡大している背景、年代別の利用実態などを多角的に分析します。さらに、人気のカテゴリやブランド、EC市場で成功するためのポイントまで、網羅的に解説します。

メンズコスメに関心のある個人の方から、市場への参入を検討しているビジネスパーソンまで、あらゆる方にとって有益な情報を提供します。

メンズコスメ市場とは

メンズコスメ市場とは

まず初めに、「メンズコスメ市場」が具体的にどのようなものを指すのか、その定義と近年の動向について解説します。市場の全体像を掴むことで、以降のデータや分析への理解がより深まります。

近年注目が集まる男性向けの化粧品市場

メンズコスメ市場とは、その名の通り男性を主要なターゲットとして開発・販売される化粧品(コスメティクス)に関連する市場全体を指します。この市場に含まれる製品カテゴリーは非常に幅広く、多岐にわたります。

具体的には、以下のような製品群がメンズコスメ市場を構成しています。

  • スキンケア製品: 洗顔料、化粧水、乳液、美容液、クリーム、日焼け止め、フェイスマスクなど、肌の健康を保ち、コンディションを整えるための基礎化粧品。
  • メイクアップ製品: BBクリーム、ファンデーション、コンシーラー、アイブロウ(眉墨)、リップクリーム、アイシャドウなど、肌の色ムラを補正したり、顔の印象を整えたりするための化粧品。
  • ヘアケア・スタイリング製品: シャンプー、コンディショナー、トリートメント、育毛剤、ヘアワックス、ジェル、スプレーなど、頭髪や頭皮をケアし、髪型を整えるための製品。
  • ボディケア製品: ボディソープ、ボディローション、ハンドクリーム、デオドラント製品など、身体の皮膚を清潔に保ち、潤いを与えるための製品。
  • フレグランス製品: 香水、オーデコロンなど、香りを身にまとうための製品。

従来、男性向けの化粧品市場といえば、シェービングフォームやアフターシェーブローション、ヘアトニックといった、いわゆる「髭剃り関連」や「整髪料」が中心でした。しかし、近年のメンズコスメ市場は、このような伝統的なカテゴリーに留まりません。特にスキンケアやメイクアップといった、これまで女性が主役であった領域で、男性向けの製品が急速に普及・多様化しているのが大きな特徴です。

この市場が注目される背景には、社会全体の価値観の変化があります。清潔感がビジネスやプライベートにおける重要な要素として認識されるようになったこと、ジェンダーレスや多様性を尊重する風潮が強まり、「男性が化粧をすること」への心理的なハードルが著しく低下したことなどが挙げられます。

また、市場のプレイヤーも変化しています。古くから男性向け製品を手掛けてきた大手化粧品メーカーに加え、D2C(Direct to Consumer)モデルで急成長する新興ブランド、海外の有力ブランドなどが次々と参入し、市場の活性化を促しています。

この記事では、このようにダイナミックに変化し、拡大を続けるメンズコスメ市場の「今」と「これから」を、信頼できるデータと共に解き明かしていきます。

メンズコスメの最新市場規模と推移

メンズコスメ市場が注目されている背景を理解したところで、次に具体的な数値データを見ていきましょう。ここでは、国内および世界の市場規模の最新データとその推移、今後の予測について詳しく解説します。

2023年の市場規模は1600億円を突破

市場調査会社の株式会社富士経済が発表したレポートによると、2023年の日本のメンズコスメティクス市場規模は1,673億円(見込み)に達しました。これは前年比で102.3%の成長であり、市場が着実に拡大していることを示す力強い数字です。
(参照:株式会社富士経済「多様化するニーズを捉え拡大するメンズコスメティクス市場を調査」)

この市場の内訳を見ると、カテゴリーごとに成長の度合いが異なることが分かります。

カテゴリー 2023年市場規模(見込み) 特徴
スキンケア 465億円 市場全体の約28%を占める最大のカテゴリー。洗顔料、化粧水が牽引。
ヘアケア 400億円 シャンプーや育毛剤が中心。頭皮ケアへの意識も高まっている。
スタイリング 338億円 ヘアワックスやジェルなど。多様なヘアスタイルに対応する製品が増加。
フェイスケア(メイクアップ含む) 243億円 BBクリームやコンシーラーなど、メイクアップアイテムの伸びが著しい。
ボディケア 129億円 デオドラント製品やボディソープが中心。清潔意識の高まりを反映。
フレグランス 98億円 香水市場。自己表現の一環として、若年層を中心に需要が拡大。

(参照:株式会社富士経済の公表データを基に作成)

特に注目すべきは、スキンケアとフェイスケア(メイクアップ)カテゴリーの成長です。従来の中心であったヘアケアやスタイリングを上回る規模となりつつあり、男性の美容意識が「整える」から「育む・装う」へとシフトしていることを明確に示しています。

コロナ禍においては、在宅勤務の増加でスタイリング剤の需要が一時的に落ち込む一方、オンライン会議で自身の顔を見る機会が増えたことから、スキンケアやベースメイクへの関心が高まるという変化も見られました。この期間を通じて形成された新しい美容習慣が、市場の構造変化を後押ししたと考えられます。

2024年以降も拡大が続く予測

メンズコスメ市場の成長は一過性のものではなく、今後も継続すると予測されています。
前述の富士経済の調査では、2027年の市場規模は1,811億円に達すると予測されており、2022年比で110.1%の成長が見込まれています。

この成長予測の背景には、後述する「市場が拡大している理由」が深く関わっています。特に、Z世代をはじめとする若年層がこれから本格的な消費者層へと移行していくことで、市場はさらに大きなポテンシャルを秘めています。彼らにとってメンズコスメは特別なものではなく、日常的な自己表現ツールとして定着しており、この価値観が今後、全世代へと波及していくことが予想されます。

また、メーカー側の動きも活発化しています。これまで女性向け製品で培ってきた技術や研究開発力を男性向けに応用し、エイジングケアや美白といった高機能な製品を次々と市場に投入しています。これにより、これまで美容に無関心だった層の掘り起こしや、既存ユーザーの単価上昇が期待されています。

世界のメンズコスメ市場の動向

日本の市場動向をより深く理解するために、グローバルな視点も見てみましょう。
米国の市場調査会社Grand View Researchのレポートによると、2023年の世界のメンズスキンケア製品市場規模は143億2,000万米ドルと推定されています。さらに、2024年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)8.3%で成長し、2030年には251億米ドルに達すると予測されています。
(参照:Grand View Research, Inc. “Men’s Skincare Products Market Size, Share & Trends Analysis Report”)

地域別に見ると、アジア太平洋地域が最大の市場シェアを占めています。特に韓国や中国では、男性の美容への関心が非常に高く、K-POPカルチャーの影響も相まって市場が急速に拡大しています。これらの国々で生まれたトレンド(例:シカ成分配合コスメ、クッションファンデーションなど)が、日本を含む他国へ波及するケースも少なくありません。

グローバル市場のトレンドとしては、以下のような点が挙げられます。

  • サステナビリティとクリーンビューティー: 環境に配慮したパッケージ、動物実験を行わない、自然由来・オーガニック成分の使用など、製品の倫理的な側面を重視する消費者が増加しています。
  • パーソナライゼーション: AIによる肌診断などを通じて、個人の肌質やライフスタイルに合わせた製品を提供するサービスが注目されています。
  • インクルーシビティ(包括性): あらゆる人種や肌の色に対応できるような、幅広い製品ラインナップの展開が求められています。

日本のメンズコスメ市場も、こうしたグローバルな潮流と無縁ではありません。国内市場の動向を読み解く上で、世界、特にアジア市場のトレンドを把握しておくことは極めて重要です。

メンズコスメ市場が拡大している5つの理由

美意識の変化と身だしなみ意識の向上、Z世代を中心とした若者の価値観の変化、SNSやインフルエンサーの影響力の増大、K-POPアイドルなど海外カルチャーの影響、リモートワーク定着による自己投資機会の増加

なぜ今、これほどまでにメンズコスメ市場は力強い成長を遂げているのでしょうか。その背景には、個人の意識から社会構造、テクノロジーの進化まで、複合的な要因が絡み合っています。ここでは、市場拡大を牽引する5つの主要な理由を深掘りします。

① 美意識の変化と身だしなみ意識の向上

市場拡大の最も根源的な理由は、男性自身の「美意識」が大きく変化したことです。かつて「男らしさ」の象徴とされた無骨さや無頓着さよりも、「清潔感」が重視される時代へとシフトしました。

ビジネスシーンを例にとると、オンライン会議が定着し、自分の顔を客観的に見る機会が格段に増えました。画面に映る自分の顔のくすみやクマ、肌荒れが気になり、「少しでも良い印象を与えたい」という思いからスキンケアやベースメイクを始める30代・40代の男性が増加しています。これは単なる見た目の問題ではなく、「清潔感のある外見は、信頼性や自己管理能力の高さを示す」という社会的な認識の変化が背景にあります。

また、プライベートにおいても、健康的な肌や整った眉は、若々しさや活力の象徴と捉えられるようになりました。特に30代以降になると、シミやシワ、たるみといったエイジングサインが気になり始めます。これに対して、「年齢だから仕方ない」と諦めるのではなく、エイジングケア製品を使って積極的にケアし、健康的な状態を維持したいというニーズが高まっています。これは「若作り」とは異なり、年齢を重ねることを受け入れつつ、より良い状態で自分を保ちたいというポジティブな自己投資の一環と捉えられています。

② Z世代を中心とした若者の価値観の変化

市場拡大の強力なエンジンとなっているのが、1990年代後半から2010年代序盤に生まれた「Z世代」です。彼らの価値観は、上の世代とは大きく異なります。

Z世代は、デジタルネイティブであると同時に、多様性を尊重する教育を受けて育ちました。そのため、「男だから」「女だから」といった旧来のジェンダー規範に対する意識が非常に低いのが特徴です。彼らにとって、メイクアップは女性だけのものではありません。ファッションやヘアスタイルを変えるのと同じように、自分の個性やその日の気分を表現するための「自己表現ツール」の一つとして、ごく自然に受け入れられています。

実際に、高校生や大学生の男子が、通学前にBBクリームで肌を整え、コンシーラーでニキビ跡を隠し、アイブロウで眉を描くといった光景は、もはや珍しいものではなくなりました。これは、誰かに強制されたり、モテたいという異性へのアピールが主目的だったりするわけではなく、「なりたい自分になる」ための純粋な行為なのです。こうした価値観を持つZ世代が、今後社会の中心的な消費者層となることで、メンズコスメ市場の基盤はさらに強固なものになるでしょう。

③ SNSやインフルエンサーの影響力の増大

SNSの普及は、メンズコスメ市場の拡大に計り知れない影響を与えています。特に、YouTube、Instagram、TikTokといったビジュアル中心のプラットフォームが、男性の購買行動を大きく変えました。

かつて男性が化粧品情報を得る場は、雑誌や店頭のPOPなどに限られていました。しかし今は、男性の美容系インフルエンサーが、新作コスメのレビュー、具体的な使い方、ビフォーアフターなどを動画で分かりやすく解説してくれます。視聴者は、自分と近い肌質や悩みを持つインフルエンサーを参考にすることで、失敗のリスクを減らし、安心して商品を購入できます。

例えば、「青ひげが気になる」という悩みを持つ男性が、インフルエンサーの「コンシーラーを使った青ひげの隠し方」という動画を見て、紹介されていた商品をそのままECサイトで購入する、といった行動は日常的に起こっています。

また、インフルエンサーだけでなく、一般ユーザーによる口コミ(UGC – User Generated Content)も重要です。X(旧Twitter)や美容系口コミサイトに投稿されるリアルな使用感は、広告以上に信頼性の高い情報源として機能します。企業側もこの流れを汲み、インフルエンサーとのタイアップやUGCを誘発するキャンペーンを積極的に展開しており、SNSが市場拡大のサイクルを加速させる中心的な役割を担っています。

④ K-POPアイドルなど海外カルチャーの影響

グローバルなカルチャー、特に韓国のポップカルチャー(K-POP)の影響も無視できません。BTSやSEVENTEENといった世界的に人気のK-POPアイドルグループは、完璧に作り込まれたビジュアルでステージに立ちます。彼らが性別を問わず多くのファンを魅了する中で、男性が精巧なメイクを施すことへの抵抗感は劇的に薄れ、むしろ「クール」「かっこいい」というポジティブなイメージへと転換しました。

ファンは、憧れのアイドルが使っているとされるコスメや、彼らがアンバサダーを務めるブランドの製品を積極的に購入します。これにより、これまでコスメに縁のなかった層にも、美容への関心の入り口が提供されました。

また、韓国は「美容大国」として知られ、高品質かつ手頃な価格の韓国コスメブランドが数多く存在します。これらのブランドが日本市場に積極的に進出し、ドラッグストアやバラエティショップで手軽に購入できるようになったことも、市場の裾野を広げる一因となっています。K-POPを入り口に韓国コスメに触れ、そこから日本のメンズコスメにも関心を持つ、という流れも生まれています。

⑤ リモートワーク定着による自己投資機会の増加

コロナ禍を経て定着したリモートワークという働き方も、間接的にメンズコスメ市場を後押ししています。リモートワークによって、多くの人が通勤時間や飲み会などの交際費を節約できるようになりました。その浮いた時間やお金を、自分自身のスキルアップや健康、そして「美容」といった自己投資に振り向ける動きが活発化しています。

前述の通り、オンライン会議で自分の顔を見る機会が増えたことは、スキンケアやベースメイク需要の直接的なきっかけとなりました。それに加え、リモートワークは「他人の目を気にせずに美容を試せる」というメリットももたらしました。例えば、これまで「日中にフェイスマスクをするのは恥ずかしい」「メイクを試してみたいけど、会社にしていく勇気はない」と感じていた男性も、自宅にいれば誰にも見られることなく、じっくりと新しい美容法に取り組むことができます。

このように、リモートワークは、美容への関心を持つ「きっかけ」と、それを実践する「時間と場所」の両方を提供したのです。この期間に美容の楽しさや効果を実感した人々が、出社が基本の生活に戻った後もその習慣を継続することで、メンズコスメ市場の安定した顧客層を形成しています。

【年代別】メンズコスメの利用実態をデータで見る

メンズコスメ市場は、一枚岩ではありません。年代によって美容に対する意識、利用するアイテム、情報を得る方法、そして購入する場所は大きく異なります。ここでは、調査データを基に、年代ごとのリアルな利用実態を解き明かしていきます。

年代別の利用率と特徴

株式会社リクルートが運営するホットペッパービューティーアカデミーの調査「【男性のメイクに関する意識・実態調査2023】」によると、男性のメイク(ベースメイク・ポイントメイク)実施率は全体で12%でした。年代別に見ると、その実態は大きく異なります。

年代 メイク実施率(ベース・ポイント) 特徴
10代(15-19歳) 23% 全年代で最も高い。メイクを自己表現として楽しむ層。
20代 20% 10代に次いで高い。就職活動や社会人生活で身だしなみとして定着。
30代 10% スキンケアは定着しつつ、メイクは肌悩みのカバーが中心。
40代 7% エイジングケアへの関心が高まる。メイクへの抵抗感はまだ根強い。
50代 5% メイク実施率は低いが、スキンケアの重要性は認識。
60代 4% 伝統的な身だしなみが中心。

(参照:株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー「男性のメイクに関する意識・実態調査2023」のデータを基に作成)

このデータから、年代ごとの特徴が鮮明に浮かび上がります。

10代〜20代:メイクアイテムへの関心が高い

10代・20代の若年層は、メンズコスメ市場の成長を牽引する中心的な存在です。彼らにとって、メイクはもはや女性だけのものではなく、ファッションやヘアスタイルと同様の自己表現の手段です。

特に利用率が高いのは、肌をきれいに見せるBBクリームやファンデーション、ニキビ跡やクマを隠すコンシーラー、そして顔の印象を大きく左右するアイブロウ(眉)関連アイテムです。SNSで流行しているメイクを試したり、好きなインフルエンサーやアイドルと同じアイテムを使ったりすることに積極的です。また、思春期特有のニキビや肌荒れに悩む層も多く、それらをカバーするためのベースメイクの需要が高いのも特徴です。彼らは、新しい商品やブランドに対する好奇心が旺盛で、トレンドを敏感にキャッチし、市場全体の流行を作り出す力を持っています。

30代〜40代:スキンケアやエイジングケアが中心

30代・40代になると、メイクへの関心は「自己表現」から「身だしなみ」や「悩み解決」へとシフトします。日々のスキンケア(洗顔・化粧水)は習慣化している人が多い一方で、メイクアイテムへのハードルはまだ感じている層も少なくありません。

この年代の主な関心事は、乾燥、シミ、シワ、たるみといったエイジングサインです。そのため、基本的な保湿ケアに加え、エイジングケア効果を謳った高機能な美容液やクリームへの需要が高まります。また、紫外線が肌の老化の大きな原因であることが広く知られるようになり、日焼け止めの使用も浸透しつつあります。
メイクに関しては、積極的に「装う」というよりは、気になる部分を自然にカバーする目的で使われることがほとんどです。例えば、会議や商談の前にBBクリームで顔色を明るく見せたり、コンシーラーで目の下のクマを隠したりといった、ビジネスシーンでの印象アップを目的とした使い方が主流です。

年代別の情報収集方法の違い

どのメディアから美容情報を得るかも、年代によって大きく異なります。

10代〜30代はSNSが主流

若年層からミドル層にかけては、SNSが圧倒的な情報源となっています。

  • TikTok: 短い動画でメイクのビフォーアフターやテクニックが紹介され、視覚的に分かりやすい。
  • Instagram: おしゃれな世界観とともに商品が紹介される。インフルエンサーの「ストーリーズ」機能でリアルタイムな情報が得られる。
  • YouTube: 長尺の動画で、複数の商品を比較レビューしたり、詳細な使い方を解説したりするコンテンツが人気。
    彼らは、企業からの公式情報よりも、自分と感性の近いインフルエンサーや、一般ユーザーのリアルな口コミを信頼する傾向にあります。動画で使用感やテクスチャーを疑似体験し、購入を決定することが多いのが特徴です。

40代以上はWebサイトや店頭情報を重視

40代以上になると、SNSの利用頻度が下がるため、情報収集の方法も変わってきます。
この年代が信頼を置くのは、ブランドの公式サイト、大手メディアが運営する美容情報サイト、ニュース記事など、比較的オーソドックスなWebメディアです。製品の成分や効果、開発背景といった、より専門的で信頼性の高い情報を求める傾向があります。
また、ドラッグストアや百貨店の店頭も重要な情報源です。実際に商品を手に取ってテスターで試したり、専門知識を持つ販売員に自分の悩みを相談し、アドバイスを受けながら商品を選んだりすることを好みます。衝動買いよりも、じっくり比較検討して納得した上で購入したいというニーズが強いのが特徴です。

年代別の購入場所の違い

最後に、どこでメンズコスメを購入しているかを見てみましょう。

若年層はドラッグストア

10代・20代の若年層にとって最も身近な購入場所は、全国の至る所にあるドラッグストアです。学校やアルバイトの帰りに気軽に立ち寄ることができ、手頃な価格帯のブランドが豊富に揃っています。様々なブランドを一度に比較検討できる利便性も、彼らにとって大きな魅力です。最近では、ドラッグストアでもメンズコスメコーナーが拡充され、テスターも充実しているため、実際に試しながら自分に合う商品を見つけることができます。

20代〜40代はECサイトの利用も活発

20代から40代にかけては、ドラッグストアに加えてAmazonや楽天市場、ZOZOTOWNといった大手ECモールや、ブランドの公式オンラインストアの利用が非常に活発です。
ECサイトのメリットは、時間や場所を選ばずに買い物ができる点、そして膨大な数の口コミやレビューを参考にできる点です。特に、百貨店で販売されているような高価格帯の「デパコス」は、対面での購入に気後れしてしまう男性も少なくありません。ECサイトであれば、人目を気にせずにじっくりと商品情報を見比べ、購入できるため、デパコス系メンズコスメの購入チャネルとして重要な役割を担っています。また、気に入った商品を定期的に届けてくれるサブスクリプション(定期購入)サービスを利用し、買い忘れを防ぎながらお得に継続するユーザーも増えています。

メンズコスメの人気カテゴリと注目アイテム

スキンケア、メイクアップ、ヘアケア・ボディケア

メンズコスメ市場は、多種多様な製品であふれています。ここでは、特に人気が高く、市場の成長を牽進している「スキンケア」「メイクアップ」「ヘアケア・ボディケア」の3つのカテゴリに分け、それぞれの役割や注目アイテム、選び方のポイントを初心者にも分かりやすく解説します。

スキンケア

スキンケアは、メンズコスメの基本であり、最も重要なカテゴリです。健康で清潔感のある肌は、好印象を与えるための土台となります。男性の肌は、一般的に女性に比べて皮脂の分泌量が多く、水分量が少ない「インナードライ」の状態になりがちです。また、毎日のシェービングによって肌表面がダメージを受けやすいという特徴もあります。こうした男性特有の肌質を理解し、適切なケアを行うことが大切です。

洗顔料・化粧水

  • 洗顔料: スキンケアの第一歩。汗や皮脂、ホコリなどの汚れを落とし、肌を清潔な状態に戻す役割があります。ゴシゴシ擦ると肌を傷つける原因になるため、しっかりと泡立てた濃密な泡で、優しく包み込むように洗うのがポイントです。皮脂のベタつきが気になる方向けのスクラブ入りや、乾燥肌向けのしっとりタイプなど、自分の肌質に合ったものを選びましょう。
  • 化粧水: 洗顔後の無防備な肌に、まず水分を補給するためのアイテムです。「ローション」とも呼ばれます。肌に潤いを与え、キメを整えることで、その後の乳液や美容液の浸透を助ける効果もあります。コットンを使わず、清潔な手のひらで優しく顔全体に馴染ませるのが一般的です。さっぱりタイプとしっとりタイプがあるので、季節や肌の状態に合わせて使い分けるのがおすすめです。

美容液・乳液

  • 美容液: 化粧水の後に使う、特定の肌悩みに特化したスペシャルケアアイテムです。「セラム」や「エッセンス」とも呼ばれます。シミ予防のための美白成分、シワ改善のためのエイジングケア成分、ニキビケアのための抗炎症成分など、自分の悩みに合わせてプラスワンで取り入れることで、より効果的なケアが期待できます。
  • 乳液: 化粧水で与えた水分が蒸発しないように、油分で膜を作って潤いを閉じ込める「フタ」の役割を果たします。ベタつくのが苦手という男性も多いですが、水分と油分のバランスを整えることは、過剰な皮脂分泌を抑える上でも重要です。さっぱりとした使用感のジェルタイプなども増えているので、自分に合ったテクスチャーのものを見つけましょう。

日焼け止め

日焼け止めは、夏やレジャーの時だけでなく、一年中毎日使うべき必須アイテムです。紫外線は、シミやそばかすの原因になるだけでなく、肌のハリを支えるコラーゲンを破壊し、シワやたるみを引き起こす最大の要因だからです。SPF(UVBを防ぐ指標)とPA(UVAを防ぐ指標)の数値を確認し、日常生活ではSPF30・PA+++程度、屋外での活動が長い日はSPF50+・PA++++など、シーンに合わせて選びましょう。最近では、白浮きしにくく、石鹸で落とせる、美容液成分が配合されているなど、男性でも使いやすい製品が数多く登場しています。

メイクアップ

メイクアップは、肌悩みをカバーし、顔の印象をより良く見せるためのカテゴリです。かつてはハードルが高いとされていましたが、近年は「バレない」程度に自然に仕上がる製品が増え、ビジネスシーンなどで活用する男性が急増しています。

BBクリーム・ファンデーション

  • BBクリーム: 美容液、日焼け止め、化粧下地、ファンデーションなどの機能が一つになった多機能アイテムです。これ一本で手軽に肌の色ムラや毛穴、薄いシミなどをカバーでき、初心者でも簡単に使えるのが魅力です。
  • ファンデーション: BBクリームよりもカバー力が高く、より本格的に肌を均一に整えるためのアイテムです。リキッド、クリーム、パウダー、クッションなど様々な形状があります。自分の肌色に合ったカラーを選ぶことが、自然に仕上げる上で最も重要です。

コンシーラー

ニキビ跡、目の下のクマ、シミ、青ひげなど、BBクリームやファンデーションだけでは隠しきれない部分的な悩みをピンポイントでカバーするためのアイテムです。スティックタイプやリキッドタイプなどがあり、カバーしたい悩みや場所によって使い分けます。指でトントンと叩き込むように馴染ませると、周囲の肌との境界がぼやけて自然に仕上がります。

アイブロウ(眉毛ケア)

眉は顔の印象を決定づける非常に重要なパーツです。ボサボサの眉を整えたり、薄い部分を描き足したりするだけで、一気に清潔感や意思の強さを演出できます。

  • アイブロウペンシル: 眉の形を整えたり、足りない部分を一本一本描き足したりするのに便利です。
  • アイブロウパウダー: 濃淡のついたパウダーで、眉全体にふんわりと色を乗せ、立体感を出すのに使います。
  • 眉マスカラ: 眉毛の色を変えたり、毛流れを整えたりするのに使います。髪色に合わせると、より垢抜けた印象になります。

ヘアケア・ボディケア

顔だけでなく、髪や身体全体のケアも、トータルでの印象アップには欠かせません。

シャンプー・スタイリング剤

  • シャンプー: 頭皮のベタつき、乾燥、フケ、かゆみといった悩みに合わせた製品選びが重要です。アミノ酸系やノンシリコンなど、頭皮環境を健やかに保つことを目的とした高機能なシャンプーが増えています。
  • スタイリング剤: ワックス、ジェル、グリース、バームなど、作りたいヘアスタイルや髪質に合わせて選びます。トレンドのセンターパートやマッシュスタイル、清潔感のあるビジネスショートなど、なりたいイメージに合わせて質感をコントロールすることがポイントです。

香水・フレグランス

香りは、目に見えないお洒落であり、その人の印象を記憶に残す効果があります。TPOに合わせて香りを使い分けるのが大人のマナーです。

  • ビジネスシーン: シトラス系やウッディ系など、爽やかで落ち着いた、強すぎない香りが好まれます。
  • プライベート: フローラル系やオリエンタル系など、少し甘さや個性のある香りも楽しめます。
    手首や首筋に1〜2プッシュする程度に留め、「ほのかに香る」くらいが周囲に好印象を与えます。

メンズコスメ市場の今後の動向と将来予測

市場規模は今後も継続的に拡大、EC化率のさらなる上昇、ジェンダーレスコスメの一般化、エイジングケアや高機能性商品の需要増、パーソナライズされた商品の登場

拡大を続けるメンズコスメ市場は、今後どのような変化を遂げていくのでしょうか。ここでは、将来の市場を形作るであろう5つの重要なトレンドと予測について解説します。

市場規模は今後も継続的に拡大

まず間違いなく言えるのは、メンズコスメ市場は今後も安定した成長を続けるということです。本記事の前半で示した通り、国内外の調査機関が一致してポジティブな予測を立てています。
その最大の理由は、Z世代が社会の中心的な購買層へと成長していくことです。彼らにとって美容は生活の一部であり、この価値観が今後、上の世代やさらに下の世代へと波及していくことで、市場の裾野は自然と広がります。
また、現在はまだ手を出していない潜在顧客層、特に40代以上のミドル・シニア層の開拓も大きな成長ドライバーとなります。エイジングケアへの関心は年代が上がるほど高まるため、彼らの悩みに的確に応える高機能な製品や分かりやすい情報提供が進めば、新たな巨大市場が生まれる可能性があります。

EC化率のさらなる上昇

メンズコスメの購入チャネルとして、EC(電子商取引)の重要性はますます高まります。
男性が化粧品を購入する際の心理的な障壁の一つに、「店頭で買うのが恥ずかしい」「店員に話しかけられたくない」というものがあります。ECサイトは、この障壁を取り払い、誰にも気兼ねなく、自分のペースで商品を比較検討できるという大きなメリットを提供します。
今後は、Amazonや楽天のような総合ECモールだけでなく、各ブランドが自社で運営するD2C(Direct to Consumer)サイトがさらに存在感を増すでしょう。D2Cサイトでは、ブランドの世界観を深く伝えたり、顧客データを直接収集してパーソナライズされた提案を行ったりすることが可能です。気に入った商品を自動で届けてくれるサブスクリプション(定期購入)モデルも、スキンケアのような継続利用が前提の製品とは相性が良く、さらに普及していくと予測されます。

ジェンダーレスコスメの一般化

「メンズコスメ」という言葉そのものが、将来的には過去のものになるかもしれません。市場のトレンドは、「男性用」「女性用」という性別による区分けから、性別を問わずに誰もが使える「ジェンダーレス(ジェンダーニュートラル)」な製品へと向かっています。
この背景には、Z世代を中心としたジェンダーに対する意識の変化があります。彼らは、製品を性別ではなく、機能やデザイン、ブランドのコンセプトで選びます。この動きに対応し、多くのブランドが、男性でも女性でも手に取りやすい、シンプルで洗練されたパッケージデザインを採用し始めています。
今後は、カップルや家族で同じ化粧水や美容液をシェアするといった消費スタイルが当たり前になるかもしれません。「for MEN」ではなく、「for ALL」という視点が、これからの製品開発における重要なキーワードとなります。

エイジングケアや高機能性商品の需要増

市場が成熟するにつれて、消費者のニーズはより高度化・専門化していきます。基本的な保湿ケアが当たり前になると、次のステップとして、より具体的な肌悩みを解決するための「攻めのケア」に関心が移ります。
具体的には、シワ改善やシミ予防といった効果が厚生労働省に認められた「医薬部外品(薬用化粧品)」への需要がますます高まるでしょう。資生堂の「SHISEIDO MEN」やカネボウの「LISSAGE MEN」といった、大手化粧品メーカーが長年の皮膚科学研究を応用して開発した高機能ブランドが、この領域をリードしていくと考えられます。
また、美容クリニックでのレーザー治療や注入療法といった美容医療を受ける男性が増加していることも、高機能性商品の需要を後押しします。施術後のデリケートな肌をケアするための、低刺激で高保湿な製品などが求められるようになります。

パーソナライズされた商品の登場

テクノロジーの進化は、コスメの選び方・使い方を根本から変える可能性を秘めています。その究極の形が「パーソナライゼーション」です。
スマートフォンのカメラや専用デバイスで肌の状態をスキャンし、AIが水分量、油分量、シミ、シワなどを分析。その診断結果に基づいて、数万〜数十万通りの組み合わせの中から、その人の肌に最適な成分を配合した化粧品を提供するというサービスが既に登場し始めています。
将来的には、日々の肌状態の変化や、季節、生活習慣に合わせて、毎月届く美容液の処方が微調整されるといった、よりダイナミックなパーソナライズも可能になるかもしれません。DNA検査の結果を基に、将来的な肌リスクを予測し、先回りしたケアを提案するサービスも現実味を帯びてきます。
画一的な製品を万人に売る時代から、一人ひとりの「個」に最適化された体験を提供する時代へ。これが、メンズコスメ市場が向かう未来の姿です。

注目されている人気のメンズコスメブランド7選

ここでは、現在のメンズコスメ市場を牽引し、多くの男性から支持を集めている人気のブランドを7つ厳選して紹介します。それぞれのブランドが持つ独自のコンセプトや特徴を知ることで、市場の多様性やトレンドをより深く理解できるでしょう。

① BULK HOMME(バルクオム)

「THE BASIC MEN’S SKINCARE」をコンセプトに掲げる、日本のD2Cメンズコスメブランドの代表格です。徹底的にベーシックを追求し、製品の「中身(バルク)」で勝負するという思想のもと、品質にこだわった製品を展開。黒と白を基調としたミニマルで洗練されたパッケージデザインも、美容感度の高い20代〜30代の男性を中心に絶大な支持を集めています。代表的なアイテムは、濃密な泡立ちが特徴の洗顔料「THE FACE WASH」や、さっぱりとしながらも高い保湿力を持つ化粧水「THE TONER」。
(参照:BULK HOMME公式サイト)

② ORBIS Mr.(オルビス ミスター)

大手化粧品メーカーのオルビスが展開するメンズラインです。「Mr.BEAUTY IS SIMPLE.」をコンセプトに、スキンケアをシンプルで心地よい習慣にすることを目指しています。長年の研究で培われた知見を活かし、ベタつくのに乾燥しがちな男性の肌に着目。無油分・無香料・無着色にこだわり、肌に優しい処方が特徴です。洗顔料とオールインワンローションの2ステップでケアが完了する手軽さも魅力で、スキンケア初心者から本格的に始めたい30代・40代まで、幅広い層におすすめです。
(参照:ORBIS Mr.公式サイト)

③ FIVEISM × THREE(ファイブイズム バイ スリー)

人気コスメブランド「THREE」から生まれた、日本初の本格的なメンズ総合コスメブランドです。コンセプトは「Individuality(個性)」。スキンケアはもちろん、ファンデーションやコンシーラー、アイシャドウ、ネイルカラーまで、既成概念にとらわれない自己表現を可能にする多彩なメイクアップアイテムをラインナップしています。ジェンダーレスな世界観とスタイリッシュなデザインで、ファッションやクリエイティブに関心が高い層から熱く支持されています。バータイプのファンデーション「ネイキッドタッチ モイスチャライザー」はブランドの象徴的なアイテムです。
(参照:FIVEISM × THREE公式サイト)

④ SHISEIDO MEN(シセイドウ メン)

世界に誇る日本の化粧品メーカー、資生堂がその最先端の皮膚科学研究を結集して展開するグローバルブランドです。「可能性は、肌に出る。」をスローガンに、肌の根本的な機能に着目した高機能なエイジングケア製品を揃えています。特に、乾燥や肌荒れなどのダメージから肌を守り、活力を与える美容液「アルティミューン パワライジング コンセントレート」は、ブランドを代表する逸品。本格的な肌悩みを抱える30代以上の男性から、絶大な信頼を得ています。
(参照:SHISEIDO MEN公式サイト)

⑤ BOTCHAN(ボッチャン)

「『男の子だから』を脱ぎ捨てよう。」という挑発的でキャッチーなコンセプトを掲げる、新進気鋭のジェンダーレスコスメブランドです。天然植物由来成分にこだわり、肌への優しさを追求しながらも、カラフルでポップなパッケージデザインが目を引きます。遊び心あふれる世界観は、従来のメンズコスメのイメージを覆し、特に新しい価値観を持つ10代・20代の若者から人気を集めています。製品名も「ジェントルクレンザー(洗顔料)」や「フォレストトナー(化粧水)」などユニークです。
(参照:BOTCHAN公式サイト)

⑥ uno(ウーノ)

資生堂が展開する、ドラッグストアを中心に販売されるマス市場向けのメンズコスメブランドです。「大人への進化」をテーマに、スキンケアからヘアスタイリング、BBクリームまで、男性の身だしなみに必要なアイテムを幅広く網羅しています。手に取りやすい価格帯と、どこでも購入できる利便性で、特に10代〜30代の若者にとってはメンズコスメの入り口的な存在となっています。オールインワンジェルや、洗顔もできるUVジェルなど、多機能で時短を意識した製品が多いのも特徴です。
(参照:uno公式サイト)

⑦ LISSAGE MEN(リサージ メン)

カネボウ化粧品が展開するブランドで、長年のコラーゲン研究を活かしたスキンケアを提供しています。「スマートシンプルケア」をコンセプトに、忙しいビジネスパーソンでも手軽に本格的なケアができるよう設計されています。最大の特徴は、化粧水と乳液の機能を1本に凝縮した化粧液「スキンメインテナイザー」。洗顔後にこれ1本で保湿ケアが完了するため、面倒な手間を省きたいけれど、しっかりとケアはしたいという大人の男性のニーズに見事に応えています。
(参照:LISSAGE MEN公式サイト)

メンズコスメのEC市場で成功するためのポイント

ターゲット層を明確にする、SNSを活用したマーケティング戦略、初心者向けの分かりやすいコンテンツを提供する、ライブコマースなど新しい販売手法を取り入れる、悩みに寄り添う顧客サポート体制を整える

今後ますます重要性が高まるメンズコスメのEC市場。この競争が激化する市場で、新規参入や事業拡大を成功させるためには、どのような戦略が必要なのでしょうか。ここでは、成功に不可欠な5つのポイントを解説します。

ターゲット層を明確にする

「男性全般」をターゲットにしていては、誰の心にも響かないメッセージになってしまいます。成功の第一歩は、「誰に」「何を」届けたいのかを徹底的に明確にすることです。

  • 年代: 10代〜20代の若者向けか、30代〜40代のビジネスパーソン向けか。
  • 美容への関心度: これからスキンケアを始める初心者か、既に美容に関心が高い上級者か。
  • ライフスタイル: アクティブなアウトドア派か、多忙なインドア派か。
  • 悩み: ニキビやテカリが悩みか、シミやシワといったエイジングサインが悩みか。

このようにペルソナ(具体的な顧客像)を詳細に設定することで、製品のコンセプト、価格設定、パッケージデザイン、そして後述するマーケティング戦略まで、全ての施策に一貫性が生まれます。

SNSを活用したマーケティング戦略

特に若年層〜ミドル層をターゲットにする場合、SNSの活用は必須です。ただし、単に広告を出すだけでは効果は限定的です。共感と信頼を生むコミュニケーションが鍵となります。

  • インフルエンサーマーケティング: 自社ブランドのターゲット層と親和性の高いインフルエンサーに、正直なレビューを依頼します。単発のPR投稿だけでなく、製品開発に意見をもらうなど、長期的なパートナーシップを築くことが理想です。
  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出: 購入者が「#〇〇(ブランド名)で肌質改善」といったハッシュタグを付けて投稿したくなるようなキャンペーンを企画します。良い口コミをブランドの公式アカウントが積極的に紹介することで、さらなる口コミの拡散を促します。
  • 動画コンテンツの充実: YouTubeやTikTok、Instagramリールで、製品のテクスチャーが分かる動画や、具体的な使い方を解説するチュートリアル動画を配信します。静的な画像だけでは伝わらない製品の魅力を、視覚的に訴求することが重要です。

初心者向けの分かりやすいコンテンツを提供する

男性の中には、「美容に興味はあるけど、何から始めていいか分からない」「専門用語が難しくて挫折した」という人がまだまだ多く存在します。こうした初心者の不安を取り除くための、親切で分かりやすいコンテンツは、強力な差別化要因となります。

  • お悩み診断コンテンツ: いくつかの簡単な質問に答えるだけで、自分におすすめの製品ラインナップを提案してくれる診断ツールをサイトに設置します。
  • 基本のスキンケアガイド: 「洗顔→化粧水→乳液」といった基本的な流れや、それぞれのアイテムの役割、正しい使い方などを、イラストや動画を交えて丁寧に解説します。
  • よくある質問(FAQ)の充実: 「BBクリームはクレンジングが必要?」「日焼け止めはいつ塗るのが効果的?」といった、初心者が抱きがちな疑問に先回りして答えるページを用意します。

ライブコマースなど新しい販売手法を取り入れる

ECの弱点は、商品を直接試せないことです。この弱点を補う新しい販売手法として、ライブコマースが注目されています。
ライブコマースとは、ライブ配信を通じて視聴者とリアルタイムでコミュニケーションを取りながら商品を販売する手法です。ブランドの開発担当者や美容部員、インフルエンサーが、実際に製品を使いながら、その質感や使い方、効果を実演します。視聴者はチャットで自由に質問でき、その場で回答を得られるため、店舗での接客に近い体験ができます。これにより、購入への不安が解消され、コンバージョン率の向上が期待できます。

悩みに寄り添う顧客サポート体制を整える

ECサイトは、一度購入してもらって終わりではありません。購入後も顧客との関係を継続し、ファンになってもらうためのサポート体制が極めて重要です。

  • オンラインカウンセリング: ビデオ通話などを通じて、専門のカウンセラーが個別の肌悩みの相談に乗ります。
  • チャットサポート: AIチャットボットと有人チャットを組み合わせ、24時間365日、いつでも気軽に質問できる環境を整えます。
  • 購入後のフォローメール: 商品の到着後、使い方のアドバイスや、一緒に使うと効果的なアイテムの提案などをメールで送ります。
    こうした地道なコミュニケーションを通じて、「このブランドは自分のことを分かってくれる」という信頼感を醸成することが、LTV(顧客生涯価値)の最大化に繋がります。

まとめ

本記事では、メンズコスメ市場の最新の市場規模から、その拡大背景、年代別の利用実態、人気の製品カテゴリ、そして今後の展望までを、データを基に包括的に解説してきました。

メンズコスメ市場は、2023年に国内で1,600億円を超える規模に達し、今後も継続的な成長が予測される非常に有望な市場です。その背景には、単なる流行に留まらない、男性の美意識の変化、Z世代の新しい価値観、SNSの普及といった、構造的で不可逆な社会の変化があります。

市場の主役は、もはや伝統的なヘアケアやシェービング関連製品ではありません。肌を健やかに保つ「スキンケア」と、なりたい自分を表現する「メイクアップ」が、新たな成長エンジンとして市場を力強く牽引しています。

このダイナミックな市場で成功を収めるためには、変化の本質を捉えることが不可欠です。
メンズコスメ市場の成功の鍵は、多様化する男性一人ひとりの『なりたい自分』に真摯に寄り添い、美容を『特別なこと』から『当たり前の自己表現』へと変える手助けをすることにあります。

性別による垣根はますます低くなり、個々の悩みやライフスタイルに最適化されたパーソナルなケアが求められる時代が到来しています。この記事が、メンズコスメという成長市場の現在地と未来を理解するための一助となれば幸いです。